社会保険労務士の仕事は悲しいかな「人の不幸は蜜の味」という因果な部分もありますが、それでもその不幸を如何にして最小限に抑えるか、そしてその後のトラブルを如何にして未然に防ぐか、が問われる重要な位置にあります。特に解雇については、労使トラブルの大きなきっかけともなりうることから、慎重な対応が求められます。

 90年代が「失われた10年」と呼ばれ、2000年からの10年も景気回復というよりはむしろ格差社会の到来、そして2008年のリーマンショックによる世界的な金融危機により、さらに景気が悪化するという悪循環を繰り返す日本。特に90年代の景気悪化に対して、企業は余剰人員の解雇と賃金カットで乗り切ろうとしました。

 「労働は契約」という当たり前のことが、会社のみならず労働者側でもなかなか認識されていませんが、よくよく考えればごく単純な話。労働者は会社に労務という形で時間を提供し、会社はその労務提供に対して賃金を支払いましょう、というお互いの納得ずくの約束事が「労働契約」です。ですから解雇とは、労働者が会社との契約を破ったか、会社が労働者との契約を守れなくなったか、そのどちらかが原因で発生する事象なのです。

 労働者に契約上求められる能力が足りなければ契約違反ですし、また勤務態度が不良であれば契約履行する意思がない、ということになります。
 逆に会社側の契約違反とは、労働者が普通どおり仕事をしているのに賃金が支払われないことを意味します。前者が普通(懲戒)解雇、後者が整理解雇となります。どちらも行うためには厳密な要件があります。

 どちらの解雇にも必ず求められるのは「就業規則」にその旨の決まりがなければならない、ということです。そもそも就業規則がない会社は論外ですが、就業規則がある会社でも、解雇についての決まりが限りなくあいまいな会社は、事実上解雇することができない、と言ってもいいでしょう。続きはまた次回。

いのしし社会保険労務士事務所

所長 中村雅和(社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー)

中小企業の労務顧問を中心に、就業規則の作成、労働相談、助成金の申請代行などが主な業務。行政や大学での講演、業界紙などでの執筆も積極的におこなっている。所長へのお問い合わせは下記までどうぞ!

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