野球賭博に関与した大相撲の力士と親方が、日本相撲協会を解雇されたのは記憶に新しいところ。今回お話しする「懲戒解雇」は従業員が行った「不法行為」により会社が不利益を被った、として従業員を解雇することを言います。
 しかし、鉄道会社の社員がわずか数百円の横領で解雇される一方、公務員の飲酒運転による懲戒免職が、裁判でひっくり返されたりします。どんな基準で解雇されてしまうのか、とても気になるところですね。

 裁判例をいくつかご紹介しましょう。

 人の家に無断侵入して警察に捕まり、罰金刑を受けた工員が懲戒解雇されましたが、その工員が会社ではあまり重要な地位にいなかったので、会社の名誉を汚したとまでは言えない、として解雇無効になった例。
 所持品検査を拒んだバスの運転手が懲戒解雇され、有効と認められた例。
 学生時の反体制闘争による有罪判決などを隠して就職したプレス工を経歴詐称として懲戒解雇し、有効と認められた例。
 そして、高齢の母を持つ営業マンが転勤を命じられ、拒否したところ職務命令違反で懲戒解雇され、下級審では解雇無効とされたものの、最高裁で逆転して有効と認められた例、など。

 裁判で一貫して言われているのは、その懲戒解雇に、誰が見ても明らかな理由があるかどうか、また、誰が見ても解雇は仕方ないなと思える内容かどうか、という点にあります。

 「無断侵入した」という明らかな理由があるにせよ、私生活上の非行で、しかも罰金刑に過ぎない行為に懲戒解雇は、世間一般的には重過ぎるなぁ、と裁判官は判断した、ということです。さらには、「所持品検査を拒んだ」という明らかな理由は、会社の秩序を乱したという意味で世間一般的にも解雇はやむを得ない、と裁判官は判断した、ということです。

 法律や裁判は難しい、という先入観を一度は捨て、従業員のしでかした行為が自分の感覚、世間の感覚で冷静に観る。これが解雇の基準の第一歩と言えるのかもしれません。

いのしし社会保険労務士事務所

所長 中村雅和(社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー)

中小企業の労務顧問を中心に、就業規則の作成、労働相談、助成金の申請代行などが主な業務。行政や大学での講演、業界紙などでの執筆も積極的におこなっている。所長へのお問い合わせは下記までどうぞ!

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