さて、前回。
従業員が会社のお金を横領した。会社の秘密を同業他社に漏らして会社に多大な損害を与えた。など、従業員が悪いことをしたときに行う解雇が「懲戒解雇」というのをお話ししたところです。先ほどの例は明らかに従業員が悪いのですが、それでも懲戒解雇ができない、ということも実はありえます。

懲戒解雇の要件は過去の判例を下に、

  1.  何をしでかしたら解雇だ、と就業規則に明示されていること。
  2.  しでかしたことが本当に悪いのかどうかの判断基準は「客観的に合理的」で「社会通念上、相当」であること。
  3.  解雇する前に弁明の機会を与えていること。
  4.  こうした内容の就業規則があらかじめ従業員に周知されていること。
  5.  もちろん、「しでかした」という事実が存在していること。
  6.  以前にその会社が行った懲戒処分と均衡がとれていること。
  7.  一度の非違行為につき、何度も重ねて処分しないこと。

となっています。するとですね、以上の7つの要件のうち、ひとつでもクリアしていなければ、裁判では負ける可能性がある、ということなのですね。
ありがちなケースなのですが、就業規則もなく、大して悪いこともしていないのに、ただ事業主の癇に障ってしまっただけで、「クビだ!」と叫んでしまうパターン。いままでは、こうしたケースに労働者は泣き寝入りしていましたが、今や労働者もインターネットから法的な知識を手に入れる時代。そして消費者金融の過払い利息を請求してきた弁護士や司法書士が、「次は労使トラブルだ」ということで、企業を訴え始めたこと。こうしたことが企業の足元を脅かしています。

もちろん法律を守っている企業は問題がないのですが、解雇や不払い残業では、何を守ったら企業が大丈夫なのか、よくわかってないことが多いのが現実です。懲戒解雇すべき従業員が出た場合にも、まず手前で一息ついて専門家のアドバイスを受ける。これが大事だと最近は実感しています。

いのしし社会保険労務士事務所

所長 中村雅和(社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー)

中小企業の労務顧問を中心に、就業規則の作成、労働相談、助成金の申請代行などが主な業務。行政や大学での講演、業界紙などでの執筆も積極的におこなっている。所長へのお問い合わせは下記までどうぞ!

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